もしもの時、家族が迷わないように――エンディングノートは、連絡先や資産の手がかり、医療・介護や葬儀の希望を一冊にまとめる「暮らしの道しるべ」です。本記事では、遺言書との違い、今書くべき理由、紙・デジタルの選び方、30分で始める手順、必須項目やデジタル遺品への備え、保管・共有・更新のコツまでをやさしく解説。未完成でも役立つ作り方で、今日から安心を整えましょう。
エンディングノートって何?遺言書との違いは?
エンディングノートって何?
エンディングノートは、自分の「もしも」に備えて、暮らしや想い、連絡先や資産の手がかり、医療や葬儀の希望などを一冊にまとめておくノートです。
形式に決まりはなく、市販の冊子を使っても、手帳やファイル、デジタルのメモでも構いません。
目的は、残された人が困らないように「道しるべ」を残すこと。
そして、書く本人にとっては、人生の棚卸しをして優先順位を見直す良い機会にもなります。
エンディングノートに書けることの例
- 基本情報:氏名・生年月日・マイナンバーの所在・保険証の場所
- 緊急時の連絡網:家族・親族・友人・職場・かかりつけ医
- 資産の手がかり:銀行口座のある金融機関名、証券会社名、不動産の登記情報の所在、保険証券の保管場所、貸金庫の存在など
- デジタル資産:利用サービス一覧、契約中のサブスク、クラウド写真、ドメイン・暗号資産の管理方法
- 医療・介護の希望:延命治療の意向、かかりたい医療機関、アレルギーや服薬歴
- 葬儀・供養の意向:宗派、規模、連絡してほしい人、遺影の候補、納骨の希望、喪主のお願い
- 日常の引き継ぎ:ペットの世話、植物の水やり、賃貸・公共料金の契約情報
- メッセージ:感謝の言葉、形見分けの希望(法的効力は後述の通り)
エンディングノートのメリット
- 必要書類や連絡先が一箇所にまとまり、手続きの初動がスムーズになる
- デジタル時代の「見えない資産」(ネット銀行・ポイント・サブスク)の見落としを防ぐ
- 本人の希望(医療・葬儀など)を家族が推し量らずに尊重しやすい
- 生前の整理が進み、無駄な契約の見直しや相続トラブルの予防につながる
注意点(ここは大切)
- 法的効力はありません。財産の分け方を指定しても、原則として拘束力は生じません。
- 内容は必ず更新を。引っ越し、口座の開設・解約、結婚・離婚、家族構成の変化などの節目で見直す
- 保管とセキュリティのバランスを取る。場所がわからないと役に立たない一方、パスワードの丸写しは危険
- 感情の配慮を。希望は「お願い」として書き、断定的な表現を避けると受け取る側の負担が軽くなる
遺言書との違いは?
最大の違いは「法的効力の有無」です。
エンディングノートは意思表示のメモに過ぎず、相続の分配を決定する力はありません。
一方、民法の方式に従って有効に作成された遺言書は、相続の場面で法的に尊重されます(ただし、相続人の「遺留分」など法律上の制約は存在します)。
遺言書の主な種類と特徴
- 自筆証書遺言:本人が自書で作成する方式。費用を抑えやすいが、方式不備のリスクがある。全文・日付・氏名の自書など、民法の要件を満たす必要がある。
法務局の保管制度を利用すれば、原本を安全に保管でき、家庭裁判所の検認も原則不要になる。 - 公正証書遺言:公証人が作成し、公証役場に原本が保管される。方式不備の心配が少なく、家庭裁判所の検認も不要。費用と手間はかかるが、確実性が高い。
- 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま、公証役場で「預かった事実」を証明する方式。実務では利用が少ない。
エンディングノートと遺言書、書ける内容の違い
- 財産の分け方:遺言書なら法的拘束力を持つ(ただし限度あり)。エンディングノートは希望としての参考情報に留まる。
- 葬儀・供養・医療の希望:どちらにも書けるが、法律上の決定権は別の手続や家族の判断に委ねられることが多い。実務上はエンディングノートの記載が重要な手がかりになる。
- 連絡先・契約一覧・暗証番号の手がかり:エンディングノートが適する。遺言書は変更のたびに作り直すのが非効率。
どちらを書けばいい?
結論は「役割の併用」
相続の分配など「法律で決めるべきこと」は遺言書で、日々の情報や希望、家族に残したいメッセージはエンディングノートで補完するのが現実的です。
まずエンディングノートで資産・契約・想いを棚卸しし、必要な部分を遺言書に落とし込むと、漏れやムダが減ります。
ケース別の使い分けヒント
- 不動産が複数・相続人が多い・事業承継がある:遺言書を優先(遺言執行者の指定も検討)。エンディングノートで物件ごとの情報・賃借人・保険・ローン情報を整理。
- 単身・親族と疎遠:エンディングノートで連絡先と希望を詳細に。預貯金の引き継ぎを確実にしたいなら遺言書も整備。
- 再婚・子が異なる:遺産分割はトラブル化しやすい。公正証書遺言を軸に、家族へのメッセージをノートに。
- 未成年の子がいる:後見や教育資金の方針など、遺言書で明確化。日々の生活情報はノートへ。
エンディングノートの書き方・続け方のコツ
- 100点を狙わない:まずは「連絡先」「重要書類の場所」「金融機関名の一覧」から。途中でも役に立ちます。
- 章立てを決める:「身の回り」「お金」「医療・介護」「葬儀・供養」「デジタル」「メッセージ」など、同じ順番で更新しやすい構成に。
- 固有名詞を具体的に:金融機関は「○○銀行△△支店」、保険は「会社名・証券番号・保管場所」。
- 更新の合図を決める:引っ越し、口座やクレジットの新設・解約、機種変更、家族の就学・就職、誕生月などを見直しのトリガーに。
- 一覧化で迷子防止:契約一覧、資産マップ、連絡帳は1ページに集約。詳細は別紙でもOK。
デジタル時代の工夫
- パスワードの丸書きは避ける:サービス名・アカウントID・復旧用メールの情報までに留め、具体的なパスワードはパスワードマネージャーの「緊急アクセス」機能で共有を検討。
- 二段階認証の受け皿:認証アプリの移行方法、予備コードの保管先を書いておく。
- SNS・写真・サブスクの方針:「削除」「保存」「家族に移管」などの希望を明示。
- 紙とクラウドの併用:紙は発見性が高く、クラウドは更新が容易。表紙に「最新版は○○に保管」と明記すると迷わない。
保管場所と共有のしかた
- 発見される工夫:自宅の決めた引き出し、耐火金庫、書類ボックスなど。封筒の表に「エンディングノート在中」と書くと見つけやすい。
- 知らせる相手:配偶者・子・信頼できる友人・代理人。場所と合鍵の所在を口頭か別紙で伝えておく。
- 遺言書とは分ける:遺言書は法務局保管や公証役場に。エンディングノートはコピーを家族に渡しても良い。
よくある誤解Q&A
Q. エンディングノートだけで相続手続きは進められる?
A. 手続きの「道しるべ」としては大いに役立ちますが、遺産の分け方を決める効力はありません。
分配を指定したいなら遺言書が必要です。
Q. ノートに「この家は長男へ」と書けば大丈夫?
A. 原則不可です。
遺言書の方式に従っていなければ法的拘束力は生じません。
さらに、相続人には「遺留分」という最低限の取り分が認められています。
Q. 葬儀・お墓の希望はどこに書く?
A. エンディングノートで十分役に立ちます。
遺言書は開封・確認のタイミングが死亡後しばらく経ってからになることもあるため、葬儀の即時対応にはノートが向きます。
Q. 何歳から書くべき?
元気なのに縁起でもない?
A. ライフイベントごとの「生活ノート」として始めて構いません。
むしろ元気なうちがベスト。
今の希望が将来変わっても、更新すれば良いだけです。
エンディングノートから始める「安心」のつくり方
- 資産と契約の棚卸し:金融機関名・保険・不動産・サブスク・IDを一覧化
- 希望の言語化:医療・介護・葬儀・形見分けの「お願い」をやさしい言葉で
- 遺言が必要か判定:不動産や相続人関係が複雑なら、専門家と遺言書化を検討
- 保管・共有:場所を決めて、信頼できる人に存在と保管先だけは伝える
- 定期見直し:年1回+ライフイベント時に更新
まとめ
エンディングノートは、家族の負担を減らし、あなたの想いを形にする「道しるべ」。
一方で、相続の分配など法的に決めたい事項は、遺言書で整えることが不可欠です。
両者はどちらか一方ではなく、役割の異なるパートナー。
まずは今日、連絡先リストと重要書類の保管場所を書き出すところから始めてみてください。
小さな一歩が、大きな安心につながります。
どんなメリットがあり、なぜ今書くべきなの?
書くと何が変わる?
具体的な効用と安心
エンディングノートは、万一のときに備える「情報と気持ちの整理帳」です。
書き始めると、日常の不安やモヤモヤが具体化され、家族の負担が軽くなります。
単なる備忘録ではなく、暮らしを守る実用書として効果を発揮します。
家族の負担と迷いを減らす
入院・介護・葬儀・住まい・相続……決めることは山ほどあります。
あなたの考えが一つでも明文化されていれば、家族は「本当はどうしてほしかったのだろう」という迷いから解放されます。
- 治療方針や延命の希望
- 葬儀の規模、形式、予算感
- 大切な形見の行き先(写真、手紙、趣味の品など)
細部まで完璧でなくても大丈夫。
「優先順位」や「避けたいこと」を示すだけでも、判断の軸になります。
医療・介護の意思決定をスムーズにする
急な病気や事故では、瞬時に選択を迫られます。
事前に希望を書いておけば、家族や医療者が迷わず対応できます。
たとえば次のような項目は、特に有効です。
- かかりつけ医・服薬情報・持病の経過
- 治療で優先したいこと(痛みの緩和、在宅希望 など)
- 介護が必要になった際の希望(施設/在宅、受けたい支援)
「家族に決断の重荷を背負わせない」こと自体が、大きな思いやりです。
手続きや資産の把握が早く確実になる
口座、保険、証券、年金、クレジットカード、各種ポイントやサブスク……情報が散らばっているほど手続きは長期化します。
所在と連絡先、契約番号だけでも一覧化しておけば、手続きの漏れや二重払いを防げます。
- 金融機関・支店名・口座種別のメモ
- 保険証券番号・担当者の連絡先
- 公共料金・通信・サブスクの契約IDと支払い方法
「どこに何があるか」を知るだけで、家族は数週間〜数か月分の時間と費用を節約できます。
デジタル遺品・オンライン契約の見落とし防止
写真、クラウド、SNS、ネット銀行、証券、暗号資産、電子マネー、サブスク……デジタル上の資産は発見されにくいのが難点です。
回収方法やアカウントの所在を示すだけでも、価値あるデータの取りこぼしを防げます。
- 主要サービス名(例:Google、iCloud、Amazon など)
- 回復用メール・電話番号の記録
- 端末やパスワード管理の手がかり(保管位置、管理アプリ名)
セキュリティを守りつつ「どこにアクセスの鍵があるか」だけ明記しておくのがコツです。
心の整理と生き方の見直しにつながる
感謝を伝えたい人、大事にしたい価値観、叶えたいことを書き出すと、これからの時間の使い方が変わります。
誰に何を託したいのか、今会っておきたい相手は誰か。
書くことが、自分の現在地を照らしてくれます。
災害や突然の入院にも強い生活設計
避難先で必要になる医療情報、保険証のコピー、連絡網、合鍵の所在、ペットの預け先など。
エンディングノートは、いざというときの家庭用マニュアルとしても機能します。
どうして「今」なのか
未来は予測できないからこそ準備は平時に
事故や病気のタイミングは選べません。
困難が訪れてから書こうとしても、体力や気力、時間が足りないことがあります。
平常時に落ち着いて書いたノートは、判断の質を高め、緊急時の混乱を抑えます。
記憶が鮮明なうちに大切な情報を残す
人名・連絡先・契約情報・思い出の来歴などは、時間が経つほど曖昧になります。
特に連絡手段がLINEやSNSに偏っている場合、機種変更で履歴が消えると復元が難しくなります。
覚えている今こそが書きどきです。
家族構成や資産の変化に合わせて更新できる
転居、転職、結婚・離婚、子や孫の誕生、親の介護開始、投資や保険の見直し――暮らしは動き続けます。
エンディングノートは一度で完成させるものではなく、変化に合わせて柔軟に更新できる「生きたノート」。
早めに土台を作っておけば、更新は数分で済みます。
小さく始めれば先延ばしを防げる
完璧を目指すほどハードルが上がります。
まずは2〜3ページだけ。
後から足していく前提なら、今日から動けます。
「未完成でも役に立つ」――これがエンディングノート最大の利点です。
今日から30分で始めるスターターガイド
まずは連絡先と「もしもの希望」だけ書く
- 緊急連絡先(家族・親族・親しい友人・職場窓口)
- 医療に関する希望(延命、搬送先の希望、かかりつけ医)
- ペット・植物の世話の依頼先
これだけで、突然の入院や災害時に強いノートになります。
お金と契約の所在メモを作る
- 銀行・証券・保険の「ある/ない」と所在(通帳・アプリ)
- 年金・勤務先の連絡窓口
- 貸金庫・重要書類の保管場所
金額は空欄でも構いません。
「ここを見ればわかる」の導線づくりが目的です。
保険・年金・公共料金のポイントメモ
- 保険の給付金請求時の連絡先
- 公共料金・通信の名義と支払い方法(口座/カード)
- 解約し忘れやすいサブスクの一覧
請求・解約の連絡先だけでも、家族の手間は大幅に減ります。
続けるための習慣化アイデア
- 誕生月や新年度、衣替えのタイミングに見直す
- 更新箇所に付箋を貼り、月末にまとめて清書
- 「前回更新日」を表紙に大きく記載
更新の頻度は年1〜2回で十分。
変化があったときは都度メモを追加します。
よくあるためらいとその乗り越え方
縁起でもない?
を前向きに変える視点
エンディングノートは「終わり」のためだけではありません。
「いま」をより良くするための道具です。
家族へのメッセージや、これからしたいことを書くほど、今日の行動が具体的になります。
時間がない・面倒を解消する工夫
- 既製の様式にこだわらず、手持ちのノートから開始
- 付箋やインデックスで後から差し替えやすくする
- スマホの「メモ+写真」で書類の所在を撮影して記録
最初の30分で「表紙・連絡先・所在メモ」までできれば合格。
細部はあとでOKです。
家族にどう伝えるかのひと言例
- 「もしものときに慌てないよう、連絡先と希望だけまとめたよ」
- 「更新したら表紙に日付を書くね。何かあればここを見て」
- 「あなたの負担を減らしたくて、最低限の情報を残しておくね」
重くならない言い回しと、更新の約束が共有の鍵です。
仕上がりの質を高めるチェックポイント
誤解のない書き方のコツ
- 曖昧な表現を避け、条件と優先順位を明確にする
- 推敲時は主語と時制を整える(誰が・いつ・どうする)
- 不確かな情報は「未確認」と明記し、確認先を添える
読み手の立場で「この一文で実際に動けるか」を基準に見直すと、伝わる文章になります。
更新日・根拠・保管の記録
- ページごとに更新日を記載
- 重要情報には「出典・連絡先・担当者名」を添える
- 複数箇所に断片化しない(原本1冊+抜粋の控えに絞る)
「最新がどれか」が一目で分かる状態が理想です。
保管場所は家族の中で1人以上に伝えておきましょう。
結びに—「いまの自分」を残すことの価値
エンディングノートは、未来への備えであり、今日をていねいに生きるための羅針盤です。
大切な人を思い浮かべながら、まずは一行から。
未完成でも、書いた分だけ確かな安心が生まれます。
思い立った今が、最良の始めどきです。
いつから始め、紙・デジタルのどちらでどう書けばいい?
いつから始める?
紙とデジタルの選び方と始め方ガイド
エンディングノートは「体力が落ちてから」「定年後に」と先延ばしにされがちですが、正解は「思い立った今日から」。
理由はシンプルで、内容は生きているあいだ、何度でも書き直せるからです。
むしろ、元気で時間の融通が利く平時にこそ、落ち着いて情報を整理し、家族や信頼できる人に意向を伝えやすいのです。
今が書きどきになるサイン
- 引っ越し・転勤・単身赴任など生活拠点が変わる
- クレジットカードやサブスクなどの契約が増えた/見直した
- スマホやPCを買い替え、2段階認証の設定をやり直した
- 保険、住宅ローン、NISA・iDeCoなど金融商品の加入や変更があった
- 家族の進学・独立、結婚・離婚、出産などライフイベントが起きた
- 重大な病気・ケガの経験、持病の通院が始まった
- 免許の返納や運転頻度の低下を考え始めた
どれか一つでも当てはまったら、書き始めの好機です。
「まだ早い」は最大の障壁ですが、エンディングノートは未来の自分のための「取扱説明書」。
完璧さより、まず形にして、あとで上書きする発想に切り替えましょう。
紙で書くメリット・デメリットと上手な運用
紙のノートは、手に取れる安心感と「すぐ書ける」手軽さが魅力です。
停電や通信障害にも強く、読む人のハードルが低いのも利点。
一方で、更新の手間や紛失・水濡れリスク、複製や検索のしにくさが課題です。
紙ノートで始める具体的ステップ
- 用意するもの
- A4のリングバインダー+透明ポケット(差し替え・追記が簡単)
- 耐水性のあるペン(油性ボールペン等)。鉛筆や消えるインクは退色・改変の懸念あり
- 見出し用のインデックスシール、付箋(更新箇所の目印に)
- 見出しの骨組みだけ作る
- 基本情報/連絡先/医療・介護の希望/契約・資産の所在/デジタル関連/葬儀・供養/メッセージ
- 最重要ページを先に1枚
- 「もしものときに最初に見てほしいページ」…キーパーソン2名の連絡先、保管場所の案内、医療の意思の要点
- 証明書類は「原本の保管場所」だけ記す
- マイナンバーカード、保険証、通帳、保険証券、年金書類などは原本を添付せず、所在と連絡先を明記
- 更新ルールを先に書く
- 更新日を各ページ右上に記入/不要ページは二重線+日付で廃止記録/差し替え履歴は後ろに1枚まとめる
紙の保管・更新のポイント
- 耐火・防水性のファイルか金庫を利用。直射日光・高湿度を避ける
- スキャンしてPDFの控えを作成(クラウドやUSBに暗号化保存)。紙とデジタルの二重化で安心度アップ
- 信頼できる人に「保管場所カード」を渡す(住所、置き場所、開封のきっかけを記載)。合言葉や暗証は本文に直書きしない
- 「次回見直し日」を表紙に大きく記載(例:半年後、誕生月、年末など)
デジタルで書くメリット・デメリットと安全策
デジタルの強みは、更新・検索・共有・バックアップのしやすさ。
複数の家族が同時に閲覧し、差分管理も容易です。
ただし、端末ロックやパスワード、サービス終了リスク、サイバーセキュリティの配慮が必須です。
デジタルでの始め方ステップ
- 媒体を決める
- ワープロ文書(オフラインでも編集可)、クラウド文書(共同編集・履歴管理に強い)、表計算(契約・資産の一覧に便利)
- 「目次ページ」を1ファイル作る
- 各ファイルへのリンク、最終更新日、緊急連絡先、保管方針(どこに何があるか)を記載
- フォルダとファイルの命名ルールを統一
- 例:EN_01_基本情報_202602、EN_02_連絡先_202602、EN_03_医療方針_202602
- 自動バックアップを設定
- 同一クラウド内の履歴+外部ストレージへ定期コピー(「3-2-1ルール」推奨:3つのコピー、2種類の媒体、1つは別拠点)
- 印刷用の「緊急アクセス手順」1枚を作成
- 誰に、どの順で連絡するか/どの端末でどのアプリを開くか/保管フォルダのパス/2段階認証の代替手順(バックアップコード等)の所在
ファイル構成と命名ルールの例
EN/(フォルダ) ├─ 00_INDEX_202602.pdf(目次・更新履歴) ├─ 01_基本情報_202602.docx ├─ 02_連絡先_202602.xlsx ├─ 03_医療介護_202602.docx ├─ 04_契約資産_202602.xlsx ├─ 05_デジタル関連_202602.docx └─ 99_緊急アクセス手順_202602.pdf
更新時は「202602→202606」のように年月を進め、古い版は「OLD」フォルダで保管。
目次ファイルの先頭に「最新更新日」を明記すると、家族が迷いません。
セキュリティと共有のベストプラクティス
- 端末は必ず画面ロック(PIN/生体認証)。OS・アプリを最新化
- 重要ファイルはパスワード付与や暗号化。共有リンクは「特定の相手のみ」に限定
- 二段階認証はバックアップコードを印刷保管。認証アプリの移行手順もメモ化
- パスワードはノートに直書きせず、管理アプリの「緊急アクセス」機能や封書の連絡カードで代替
- 「誰がどこまで見られるか」を役割分担(医療=Aさん、金銭=Bさん、全体管理=Cさん)
紙とデジタルのハイブリッド戦略
結論としては「両方のいいとこ取り」が最も実用的です。
緊急時に一目で伝わる情報は紙で、頻繁に更新が必要な一覧性の高い情報はデジタルで管理すると効率的です。
ハイブリッドの基本設計
- 紙:最優先ページ(連絡先/医療の意思の要点/保管場所案内)。自宅の決めた場所に
- デジタル:契約一覧、資産の所在、定期支払、デジタルアカウント、更新履歴
- 橋渡し:紙の表紙に「デジタル保管先の説明」を簡潔に記載(サービス名とフォルダ名)。URLやパスは直書きせず、連絡先に問い合わせる方式に
更新・差し替えの習慣化テクニック
- 「見直しのタイミング」を固定(誕生月、確定申告後、保険更新時など)
- 更新対象を毎回3項目に限定(例:連絡先/契約一覧/医療方針)。ハードルを下げる
- 変更が多い情報は付箋や別紙で分離し、差し替えやすくする
- 更新したら、表紙の更新日と目次の履歴に1行追記
ライフステージ別のおすすめ構成と媒体選択
一人暮らし・現役世代
- 重視:緊急連絡(親友・親・勤務先)、医療意思の最低限、賃貸・水道光熱・サブスク一覧、スマホ解除手順の保管場所
- 媒体:デジタル中心+紙1枚(最優先ページ)。外出先でも参照できる体制に
子育て・住宅ローン期
- 重視:保険・住宅ローン・教育費口座、緊急時の子の預け先、学校・園の連絡網、家計の自動引落一覧
- 媒体:契約一覧はデジタル、家族の連絡網と緊急時フローは紙で冷蔵庫内側やファイルに
退職前後・セカンドライフ
- 重視:年金・医療・介護の手続き先、資産全体像、葬儀・供養の希望、家の管理(持ち家・賃貸)の段取り
- 媒体:紙を厚めに(読み手に優しい)、デジタルは目録と更新履歴で裏打ち
最短で形にするミニマム版テンプレ
まずは1時間あれば十分。
以下の8項目だけで「使える土台」になります。
- 連絡先3名:家族代表、予備の親族または友人、かかりつけ医(氏名・電話・関係)
- 医療・介護の希望の要点:延命治療の考え方、連絡してほしい医療機関、代理で判断してよい人
- 必須書類の所在:保険証、年金、通帳、印鑑、証券、保険証券の保管場所
- 定期支払い一覧:電気・ガス・水道、通信、保険、サブスクの「会社名・契約番号・支払口座」
- 資産の所在メモ:金融機関と支店名、証券・外貨・ネット銀行の有無(残高やパスワードは別管理で可)
- デジタルの要点:主要メールアドレス、利用端末の種類、パスワード管理方法(緊急アクセスの受け皿)
- 葬儀・供養の希望:宗教・規模感・連絡してほしい人・写真の保管場所
- 保管先と更新日:どこに置いたか、次の見直し予定日、作成者の署名
書く項目の優先順位
- 第一優先:命・健康に直結(医療意思、連絡先、服薬情報)
- 第二優先:生活の継続(定期支払い、家の鍵・車・ペットの世話)
- 第三優先:お金の手続き(資産の所在、保険・年金の窓口)
- 第四優先:気持ち(メッセージ、写真・思い出の扱い)
書きながら迷わない文章のコツ
- 短文・箇条書きで。「〜してください」より「A→B→Cの順で連絡」のように動作を明確に
- 主語を省かない。「延命は望まない」は「私は延命治療を望みません」に
- 曖昧語を避ける。「なるべく」「できれば」は期限・条件を付す(例:「3日以内に」)
- 比較ではなく基準値で。「小さく」は「家族のみ20名程度」に
- 更新日と根拠を入れる。意思が変わったら上書きし、古い版の破棄を明記
よくある失敗を避けるチェックリスト
- 更新日が書かれていない/表紙と中身の日付が矛盾している
- 連絡先が1人だけで、連絡が取れないと詰む(必ず2名以上)
- パスワードを本文に直書き(漏えいリスク)。管理方法のみ記載に留める
- どこに保管してあるか家族が知らない(保管場所カードの配布)
- 契約の一覧化がない(少なくとも「会社名・契約番号・連絡先」を1枚に)
- 医療・介護の意思が抽象的(延命・輸血・人工呼吸・在宅/入院の希望を具体化)
- 紙だけ/デジタルだけに偏る(ハイブリッドで冗長性を確保)
- 大切な証明書の「原本」をノートに挟む(別保管にして所在のみ記す)
おわりに—一度始めたら「更新するだけ」を目指す
エンディングノートは、完成させるものではなく「暮らしに伴走するメモ」です。
今日、最小構成でよいので着手し、次の見直し日を決めましょう。
紙とデジタルの特性を活かして、使う人にとって読みやすく、探しやすい形に整える。
たったそれだけで、もしもの時に周囲の迷いを減らし、あなた自身の毎日をスッと軽くします。
始めるのはいつか?
の答えは明確です。
今日から、シンプルに。
何を書けばいい?医療・介護、葬儀、資産・相続、デジタル遺品などの必須項目は?
エンディングノートに「必ず書くべきこと」総まとめ
いざという時に家族や周囲が迷わないようにするには、エンディングノートに何をどこまで書くかが肝心です。
ここでは、医療・介護、葬儀、資産・相続、デジタル遺品を中心に、漏れなく・わかりやすく・後から更新しやすい形で残すための必須項目を整理します。
書く順番は「命に関わること」から。
緊急時に参照される可能性が高い項目を先頭にまとめ、細部は後段に回すと実用性が高まります。
医療と介護の希望を具体化する
医療・介護の情報は、救急時・入院時・意思疎通が難しくなった時に即参照されます。
曖昧さを避け、連絡先と希望をセットで記載します。
治療方針と意思決定の体制
- 緊急連絡先(家族・友人・主治医・かかりつけ薬局):氏名/関係/電話/時間帯別の優先順位
- 持病・服薬・アレルギー:病名、薬剤名、用量、投与中止が危険な薬
- 延命治療の意向(心肺蘇生、人工呼吸器、経管栄養、透析など):「受けたい/状況により/望まない」の選択と条件
- 終末期の場所の希望:自宅/病院/ホスピス(受け入れ先の相談先や候補も)
- 臓器提供・献体の意思:登録有無、登録番号、窓口
- 意思決定を託す人(代理人):氏名・連絡先・関係・依頼済みの確認メモ
- 救急時に持参すべき書類の置き場所:お薬手帳、検査結果、健康保険証(マイナ保険証)、限度額適用認定証 など
介護の方針・生活の希望
- 要介護認定の状況:要介護/要支援の区分、認定有効期限
- ケアマネジャー・サービス事業者:事業所名、担当者、連絡先
- 住まいの希望:自宅改修/サービス付き高齢者向け住宅/有料老人ホーム 等(費用上限・場所の条件)
- 日常のこだわり:食事の嗜好、宗教的配慮、日課(散歩・入浴時間)、避けたいこと
- 福祉用具・医療機器:レンタル先、機器名、返却方法
- 介護費用の捻出方法:対象口座、支払方法、家族負担の目安、緊急時に解約してよいサービス
葬儀・供養・連絡の設計
生前に明確にしておくほど、家族の負担と迷いを減らせます。
「誰に、何を、どんな順番で」行ってほしいかまで示すのがポイントです。
葬儀のスタイルと基本方針
- 葬儀の形:家族葬/一般葬/直葬/無宗教式 など(理由・希望の雰囲気)
- 宗教・菩提寺:宗派、菩提寺の有無、住職名・連絡先、戒名・法名の希望
- 喪主(候補)と役割分担:喪主、会計、受付、連絡係
- 予算と支払い方法:上限額、葬儀社の候補・事前見積、積立の有無
- 遺影写真の指定:写真の保管場所/データ名、加工の可否
- 香典・供花・供物:辞退の有無、返礼の方針
- 弔辞・音楽・会場の演出:希望する人・曲名・飾り付け
お墓・納骨・その後のこと
- 埋葬方法:家墓/納骨堂/樹木葬/散骨(場所・手続きルールの確認も)
- 墓所情報:霊園名、区画、管理者、管理費の支払い方法
- 位牌・仏壇:所在、継承者の希望
- 法要・年忌:実施の有無、簡略化の方針、会食の有無
連絡網と広報
- 訃報の連絡先リスト:家族・親族・友人・仕事関係(優先順/連絡方法/SNSでの告知可否)
- 死亡届・火葬許可手続きの担当者:想定する担当と必要書類の置き場所
- 新聞・社内広報・町内会:掲載の有無、掲載文の原案
財産・債務の全体像と相続の準備
資産と契約の所在を一覧化し、最低限の手続き導線(誰が、どの窓口で、何を持って)まで示すと、手続きが格段に早くなります。
相続分配の「法的な指定」は遺言書で、エンディングノートには「希望・補足」を書くと整理がつきます。
金融資産の棚卸し
- 預貯金:金融機関名、支店、種別、最終利用日、通帳・キャッシュカードの場所
- 証券・NISA・iDeCo:証券会社、口座番号、銘柄の概要、評価額の目安
- 保険:生命・医療・火災・自動車(保険会社、証券番号、受取人、保険証券の所在)
- 年金・企業年金:基礎・厚生・私的年金、加入番号、年金手帳や通知書の場所
- ポイント・マイル:サービス名、ID、残高の目安、家族への移行可否
不動産・動産・貴重品
- 不動産:所在地、登記名義、固定資産税情報、管理会社、担保の有無
- 自動車・バイク:車検証の場所、自賠責・任意保険、売却・廃車の希望
- 貴金属・骨董・収集品:保管場所、評価の目安、売却先の候補
- 貸金庫・合鍵:場所、入庫品の概要、立ち会いが必要な人
借入・保証・サブスクリプション
- ローン・クレジット:会社名、契約番号、残債額の目安、団信の有無
- 連帯保証・保証人:契約先、開始日、解除条件
- 定期支払い:電気・ガス・水道・通信・プロバイダ・新聞・各種サブスク(契約者名義、支払い口座、解約手順)
遺言・死後の事務の段取り
- 遺言書の有無:種類(自筆/公正証書/秘密)、保管場所、作成年月、証人・公証役場の情報
- 遺言執行者・死後事務委任:氏名、連絡先、契約書の所在
- 希望メモ:形見分け、寄付先、ペットの引き取り、家財の処分方針
デジタル遺品とオンラインアカウント
スマホが開けない、二要素認証で手続きが止まる——もっとも実務で困るのがデジタル領域です。
「一覧」と「開け方(復旧方法)」を分けて記録しましょう。
機器とアクセスの基本情報
- 所有デバイス:スマホ・PC・タブレット・外付けHDD(メーカー/型番/保管場所)
- 画面ロック解除方法:PIN/パスコードの保管方針(直接記載は避け、封緘の保管場所や合言葉のヒントを記す)
- 二要素認証対策:認証アプリの所在、バックアップコードの保管、SMS受信回線(eSIM含む)の名義
アカウント分類と引き継ぎ
- 重要アカウント(金融・決済・クラウドストレージ・メール):サービス名、ID、連絡用メール、復旧用電話番号
- SNS・写真・サブスク:解約/アーカイブ/追悼化の希望(Facebookの追悼設定、Apple/Googleのデジタル遺産連絡先設定の有無)
- ドメイン・ブログ・ネットショップ:レジストラ・CMS、更新期限、事業継続・閉鎖の方針
- 暗号資産:取引所・ウォレット名、保管方針(秘密鍵・リカバリーフレーズの扱いと封緘場所)
パスワード管理の実務
- パスワードマネージャー利用時:サービス名、マスターパスワードの保管方法、緊急アクセス機能の設定状況
- 紙に残す場合:「ID一覧のみ」を記し、パスワードは封緘書面で別保管、開封条件と開封者を明記
人間関係・大切なメッセージ
手続き情報だけでなく、伝えたい思いも残しておきましょう。
争いの芽を減らし、関係者の心の整理に役立ちます。
- 感謝とお願いのページ:短い手紙形式で可
- 形見分けの希望と理由:誤解を避ける言葉選びを意識
- 仕事・地域活動の引き継ぎ:未了タスク、引き継ぎ先、資料の所在
緊急時の情報と生活インフラ
- 本人確認物の置き場所:マイナンバーカード、運転免許、パスポート、年金手帳
- 印章・証明書:実印・銀行印・認印、印鑑登録カード、住民票・戸籍謄本の取得先
- 公共料金・集合住宅の管理:契約番号、管理会社、緊急連絡窓口
- ペット:名前、性格、かかりつけ動物病院、フード、里親候補、費用口座
- 家の安全:ガス元栓、ブレーカー、貴重品の保管場所、危険物の処分指示
すぐ書ける記入欄サンプル
最初から完璧を目指さず、1~2ページの「要点シート」を作っておくと安心です。
以下を白紙に転記して埋めてみましょう。
- 1. 緊急連絡先(3名まで):氏名/続柄/携帯/自宅/優先順位
- 2. 医療の希望:延命治療の可否(条件付可・不可・可)、終末期の場所、臓器提供の意思
- 3. 主治医・薬局:名称/電話/所在地、持病・服薬・アレルギー
- 4. 葬儀の方針:形式/喪主候補/予算上限/菩提寺
- 5. 財産の所在一覧(ざっくりで可):銀行(2~3行)、証券、保険、不動産
- 6. 借入・保証・サブスク:社名、毎月の支払合計、解約手順のメモ
- 7. デジタル:重要アカウントID、スマホの保管場所、二要素認証の備考
- 8. 保管場所マップ:通帳、印鑑、保険証券、鍵、USB、遺言書
- 9. 代理人・執行者:氏名、連絡先、依頼の合意状況
- 10. 更新日・次回点検日:記入日、次回の予定(月・年)
ありがちな抜け漏れと回避策
- 二要素認証で詰まる→バックアップコードを印刷し封緘、保管場所を明記
- 通帳はあるが「支店」が不明→通帳表紙のコピーを添付、アプリのスクショを保存
- 遺影が見つからない→フォルダ名・ファイル名をノートに記載、USBにも同名で保存
- サブスクの解約忘れ→クレジットカードの明細から「定期課金」一覧を作る
- 相続の希望が誤解を生む→ノートには「希望」と明記し、分配は遺言書で法的に整える
置き場所・共有の実践ルール
- 紙は「耐火・防水」の保管箱に。表紙に「緊急時に開封」と明記
- デジタルはPDF化して暗号化、共有先は2名以上、更新通知はメールで記録
- 開封条件・開封者の指定:病状・不在が一定期間続いた場合など、具体的に
- 更新履歴を残す:更新日/更新者/変更点を末尾に追記
書き進めるコツと表現のポイント
- 短文・箇条書きで。「わかる人にはわかる」表現は避け、固有名詞・正式名称で
- 迷いがある項目は選択肢を列挙し、「優先順位」と「判断の根拠」を書く
- 金額は「目安」で十分。正確な残高は通帳・明細・アプリに誘導
- 第三者が読んでも通じる順序にする:緊急→医療→葬儀→財産→デジタル→その他
年1回で整える更新サイクル
誕生日や年末など「毎年の節目」を更新日にすると続きます。
以下をチェックしましょう。
- 連絡先の変更(電話・アドレス・担当者)
- 保険・金融商品の見直し(受取人・解約返戻金・更新)
- サブスクの増減、支払い方法の変更
- 端末の買い替え、二要素認証の再設定
- 遺言・委任契約の更新、保管場所の確認
- 家族への共有状況(見つけ方の再確認、合言葉の更新)
最後に—「今の自分」を置いていく
エンディングノートは、完璧さより「役立つこと」が目的です。
まずは緊急連絡先と医療の希望、葬儀の方針、資産の所在とデジタルの開け方——この5点だけでも書き出せば、大半の混乱は回避できます。
あとは暮らしに合わせて更新するだけ。
未来の自分と大切な人のために、今日の30分を投じて「見つかる・読める・動ける」ノートを形にしていきましょう。
どこに保管し、家族とどう共有・更新すれば安心なの?
どこに保管し、家族とどう共有・更新すれば安心なの?
エンディングノートは「書く」以上に「見つかる」「読める」「最新である」ことが大切です。
ここでは、紙・デジタルそれぞれの保管と共有の現実的な方法、家族に安心をもたらす更新の仕組みづくりまで、具体策をまとめます。
紙なら「見つかる・燃えない・濡れない」を両立する
自宅での最適な置き場所と避けたい場所
紙のエンディングノートは、以下の条件を満たす場所に保管します。
- 見つけやすい場所:家族の誰もが想像できる位置(例:リビングの書棚の最上段、寝室のクローゼット上段)
- 環境に強い場所:直射日光・高温多湿を避け、結露・水漏れリスクが低い
- 適度な防犯:第三者が容易に持ち出せないが、家族が取り出せる
避けたいのは、冷蔵庫の上や窓際、床置きの収納、ガス・水回りの近く。
非常時に慌てても手が届く位置で、かつ日常の出入りが少ない場所を選びましょう。
家の外に置く選択肢(貸金庫・信頼人宅など)
自宅外の保管は「災害・盗難リスクの分散」に有効です。
- 貸金庫:耐火・防犯の面で最も強固。ただし営業時間・鍵管理の手間、家族が即時アクセスしにくい点がデメリット。ノート本体ではなく「正本の所在メモ」と重要控えの保管に向く。
- 信頼できる親族宅:鍵付きキャビネットで保管。共有者に「更新通知」を送り、差し替え忘れを防ぐルールを決める。
- 防火金庫(自宅):耐火・耐水仕様の家庭用金庫は現実的。ダイヤル番号や鍵の保管方法を別送で共有する工夫が必要。
紛失・災害に備える複製と封筒運用
紙は一点ものになりがちです。
以下の工夫で復元性を高めましょう。
- 控えの作成:スマホで全ページを撮影しPDF化。印刷控えは「コピー」であることを明記。
- 封筒ラベル:無地の角形封筒に「エンディングノート在中/開封要件(入院・死亡・判断困難時)/保管者名・連絡先/最新版の日付」を記載。
- 目録ページ:先頭に「このノートに書いた項目一覧」を作り、家族が探しやすくする。
- 差し替え運用:更新時は封筒ごと入れ替え、旧版は「日付+アーカイブ」と記して別封筒で保管(一定期間後に破棄)。
デジタル保管の現実解
クラウドとオフラインの併用設計
デジタルは「バックアップの容易さ」が強み。
以下の二重化が安心です。
- クラウド正本:主要クラウドに「EndingNote」フォルダを作成し、PDFやスプレッドシートで管理。
- ローカル控え:USBメモリか外付けSSDに暗号化のうえ保存。物理的に別の部屋・家に保管。
- 可視化:フォルダ直下に「README_まず読む.txt」を置き、所在・開き方・最新日付・問い合わせ先を記載。
クラウドはリンク共有のしやすさ、ローカルはオフラインでも読める点がメリット。
両方を前提に設計します。
暗号化・パスワードの渡し方
内容に機微情報が含まれる場合、以下の方法で守ります。
- ファイル暗号化:PDFやZIPにパスワードを設定。パスワードは別経路(封筒・SMS・手書きカード)で共有。
- パスワードマネージャ:家族代表1~2名へ「緊急アクセス」機能を設定し、発動要件(入院など)を合意。
- 分割共有:マスターパスワードは二人に別々の半分を渡すなど、単独で解けない仕組みにする。
デバイスやアカウントの引き継ぎ準備
ノートが読めても、端末に入れなければ実務は進みません。
- 端末ロック解除情報:スマホ・PCの解除方法(PIN、指紋、合言葉の所在)をノートに明記。
- アカウント一覧:メール、クラウド、金融、公共料金等のサービス名/ログイン方法/二段階認証の受け取り先を整理。
- 復旧手段:予備メール、認証アプリ、バックアップコードの所在。紙での控えも用意。
家族への共有、伝え方の実践
合意形成のステップと話し方
共有の目的は「困った時に迷わせないこと」。
感情のハードルを下げる言い回しが有効です。
- きっかけを伝える:「保険の見直しついでに、情報をひとつにまとめたよ」。
- 範囲を示す:「今は連絡先と医療・葬儀の希望だけ。お金の詳細は後で」。
- 役割を決める:「緊急時の連絡役はAさん、保管場所の鍵はBさんに」。
- 更新ルールを共有:「年末に見直して、差し替えたらメッセージ送るね」。
共有する範囲と役割分担
全員にすべて見せる必要はありません。
最小限の原則で分けます。
- 全員に共有:所在、緊急連絡先、医療・介護の希望、葬儀の方針。
- 代表に共有:資産の目録、パスワードの取り扱い、解約・相続の段取り。
- 外部専門家:顧問税理士・司法書士・葬祭社の連絡先。必要なページのみ提示。
緊急時アクセス体制の作り方(シートと合言葉)
発見から最初の30分で迷わない仕掛けを用意します。
- 緊急シートA4一枚:「保管場所の地図」「開封条件」「最初に電話する先」「医療希望の要点(延命措置など)」。
- 合言葉ルール:「家族内だけが知る言葉」を電話連絡時の本人確認に使用。
- 玄関・冷蔵庫裏のマグネットポケットに「緊急シートの在りか」を示すカードを設置(詳細は別場所)。
更新を続ける仕組みづくり
何を、いつ更新するかの頻度表
項目により見直し頻度を決めると負担が減ります。
- 毎年(誕生月・年末):連絡先、医療希望の確認、保険・年金の加入状況、緊急シート。
- 都度(変化時):引っ越し、婚姻・離別、相続関連の判断、主要口座の追加・解約、PC・スマホの機種変更。
- 数年ごと:葬儀・供養の希望、不動産の管理方針、デジタルサービスの棚卸し。
更新の記録とバージョン管理
「どれが最新か」を一目で示します。
- 表紙に更新日:YYYY-MM-DD形式で記載。
- 改訂履歴ページ:「v1.2(2026-02-04)資産目録更新、緊急連絡先追加」など。
- 旧版の保管:封筒に「アーカイブ」と明記し、6~12か月で破棄を検討。
- デジタルはファイル名に日付:EndingNote_v1.2_2026-02-04.pdf
うまくいくリマインドの工夫
人は忘れる前提で仕組みを作ります。
- カレンダー登録:誕生月の1日を「エンディングノート見直し」に設定。
- トリガー付箋:保険証券や通帳保管ファイルに「更新したらノートも更新」と記した目印を貼る。
- 家族イベント化:年末の片付け日に「10分アップデート」を家族で実施。
セキュリティとプライバシーのバランス
最小権限の原則と見せる・見せないの線引き
安心のために必要以上に公開しないことも大切です。
- 段階公開:普段は「所在と緊急シート」のみ、発動時に「資産・パスワード管理」に拡張。
- 閲覧ログ:クラウドで閲覧権限と履歴を確認できる設定に。
- 紙の閲覧ルール:持ち出し禁止、閲覧は同席、閲覧記録(日時・閲覧者・目的)を残す。
トラブル事例から学ぶ防止策
- 所在を伝え忘れ→緊急時に見つからず:玄関カードと緊急シートで場所を二重に周知。
- 最新版の混在→古い希望で判断:表紙の更新日と改訂履歴、旧版の速やかなアーカイブで回避。
- パスワード紛失→開けない:二経路(封筒+別居家族への口頭合言葉)で冗長化。
- 家族間の解釈違い→軋轢:ノートに「判断の理由」も一言添える。定例の共有タイムで補足。
すぐに着手できるチェックリストとテンプレ短文
今日やる三つのアクション
- 所在カードを作る:メモに「エンディングノートは寝室クローゼット上段、黒いファイルボックス内。更新日2026-02-04。連絡先090-XXXX-XXXX」と書き、家族LINEに写真を送る。
- 緊急シートを1枚作る:連絡先3名、かかりつけ病院、医療希望の要点、保管場所地図をA4で印刷。
- デジタル控えを作る:ノートをスマホで撮影→PDF化→クラウドの「EndingNote」フォルダに保存。フォルダにREADMEを置く。
封筒ラベルとクラウドフォルダ名の例
封筒ラベル例:
「エンディングノート在中/開封は入院・死亡・判断困難時/最新版2026-02-04/保管場所:寝室クローゼット上段/連絡先:XXXX」
フォルダ・ファイル名例:
- EndingNote(フォルダ)
- 00_README_まず読む.txt
- EndingNote_v1.2_2026-02-04.pdf
- 資産目録_サマリー_2026-02-04.xlsx
- 緊急シート_家族用_A4.pdf
- アーカイブ(フォルダ)
締めくくり—安心は「位置」と「人」と「更新」で決まる
エンディングノートを「どこに置くか」は、家族が最短で迷いなく動けるかを左右します。
紙は耐火・耐水・発見性を、デジタルは二重化とアクセス性を整え、所在と連絡先を家族に明確に伝える。
さらに、更新日と履歴で「いまの希望」を確実に残す。
この三点(位置・人・更新)がそろえば、内容の細部に多少の抜けがあっても、家族は適切に判断できます。
完璧を目指すより、まずは所在カードと緊急シートで「見つかる仕組み」をつくり、年1回の軽い見直しで精度を上げていきましょう。
安心は、一度形にすれば、あとは「差し替えるだけ」で続いていきます。
最後に
エンディングノートは、連絡先や資産の手がかり、医療・葬儀の希望などを整理し、家族の負担軽減と生前整理に役立つ備忘録。
法的効力はなく、財産分配は遺言書で。
遺言書は要件を満たせば効力があり、自筆・公正・秘密方式がある。
内容は節目に更新し、保管と安全性の両立も重要。